すみれ色ハイウェイ

元バス屋で高速バス好き写真家の活動誌

イレギュラーをおして

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奈良交通『やまと号』新宿~奈良・新宿~五條

 

 関東バス奈良交通が共同運行する『やまと号』が、11月より週4日運行(年末年始は毎日運行)という変則的な運行形態で運行を再開しました。

 やまと号には新宿~奈良間の便と、途中で別れて新宿~五條間を結ぶ便があります。通常時はこのうち片方が関東バス・もう片方が奈良交通での運行です(各便がどちらの会社になるかは日替わり)。しかし11月から12月にかけて、コロナ禍での変則的な運用により、同日の両便を一方の会社が2台で運行する光景が見られました。

 写真は奈良交通が同じ日の新宿~奈良・新宿~五條両便を運行していたシーンです。もっとも、この光景も一時のイレギュラーで終わるにこしたことはなく、コロナ禍が明けて通常通りの運行が再開される日を待ち望んでいます。

空前絶後の真夏

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 帰省ラッシュ、多数の乗客を乗せて各地へ向かう高速バス。バスを走らせる運転士と、バスを送り出す乗り場係員の連携プレー。日本の夏の風物詩とも言えるシーンです。

 例年通りなら夏休み、とりわけお盆の帰省ラッシュは、民族大移動と言っていいレベルの人の移動が日本各地で発生するはずでした。高速バスにおいても、他の交通機関の充実や運転士不足等の事情で一時期に比べて衰えたりとはいえど、各方面へ大量の増便が出るのが当たり前でした。

 

 しかし、今年に入って世界的に流行している新型コロナウィルス感染症は、一時は感染縮小の兆しを見せたものの再び拡大。そのため移動需要は落ち込んだままで、高速バスは引き続き運休する路線・あるいは再開したものの再び運休する路線が続出。運行している路線においても、減便をしてもなお空席が目立ち、増便を出すどころか定期便1台分の集客も覚束ない状況すら見受けられます。

 

  繁忙期に多数の増便を出し、全国的な大移動の需要に応える姿は、高速バスの醍醐味でもあると私は思っています。また、元バス会社従業員として多数の乗客を乗せた続行便を多数送り出し、大移動に貢献したというやりがいを感じていた身からしても、現状はあまりにも寂しいとしか言いようがありません。

 コロナの影響が沈静化するか、ワクチンが開発されるまではこの状況は続くと思われます。せめて来年の夏には、民族大移動とそこで活躍する高速バスを見ることができるよう願っています。

復活の狼煙

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 新型コロナウィルス感染拡大防止のための移動自粛が強く求められたことにより、高速バスは運休・減便が続出していました。その後、6月19日に都道府県をまたぐ移動自粛要請が全て解除されたことで、6月から7月にかけて、運行を再開する路線や、本数が戻る路線が多くなってきました。

 そして7月1日、東京~福岡間を結ぶ『キング・オブ・夜行バス』として知られる、西鉄バスの『はかた号』も運行を再開することになりました。また今年は『はかた号』が30周年を迎え、これにあわせて『はかた号』の専用車に新型車両が導入され、運行再開と同時にこの新型車両がデビューしました。

 運行距離が1000kmを超え、日本で最も遠い都市間を結ぶ高速バスであるはかた号を、30年にわたって走らせ続けてきたことは、同時に日本の高速バスにおける最も厳しい困難に立ち向かってきたことでもあると言えます。新型コロナウィルス感染症の影響による運休も、大きな困難であったことは想像に難くありません。それでも『はかた号』が復活したことは、暗い状況に沈んでいた高速バス業界の復活を期待できる、この上なく明るい話題であると思います。

 これまでも、そしてこれからも、バスタ新宿から見えるドコモタワーの時計が21時を指す時、『はかた号』は1000km以上の旅路に向けて走り出すのです。

※上の写真は先代の『はかた号』のものです。

New Bus Generation "GUSSURI"

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00年代中頃から、運賃の安さを売りにする新規参入のバスが多数出現したことで、高速バスは安く移動するための交通手段であるというイメージがすっかり定着していました。そんな時代が10年くらい続いた2017年、両備グループが「バス業界はここまでできるんだ」(副社長談)と送り出したのが、日本初の全室扉付き完全個室型『快眠バス』、ドリームスリーパー。2012年から走らせていた同名のバスをさらに進化させる形で、東京~大阪間・東京~広島間で運行開始しました。

内装はカーペット敷きの床に、扉付きの完全個室。座席は、NASAの理論に基づく、無重力状態を体感できる『ゼログラビティシート』を装備。車内にアロマディフューザープラズマクラスターを設置。照明は調光機能付き。オーディオサービスでは快眠音楽を提供。もはやホテルかと思うかもしれませんが、ネット上の広告では『バスにチェックイン』と表現しており、あながち間違ってもいないのでしょう。

ある時、撮影を終えてクルマで東京に戻る道中、ドリームスリーパーを見つけたので追いかけてみました。時折、自分は等速で走っているのに、前を走るドリームスリーパーが緩やかに近づいてきては、しばらくするとまた遠ざかる・・・。そうか、うるさくならないようにしている!上り坂に入ったところで等速を維持しようとすると、アクセルを強めに踏み込むことになり、エンジン音が大きくなります。流れを乱さない程度に若干の速度変化を許容しつつ、眠っている乗客を起こさないように。各社から選抜された運転士が、ハード面・ソフト面全てのステータスを寝ることに全振りした『快眠バス』を乗客に提供するのです。

安値至上主義から快眠バスへ。100km/hで走るGUSSURIの時代へようこそ。

 

使用機材:Panasonic LUMIX GX7mark2+Panasonic LEICA DG SUMMILUX 15mm / F1.7 ASPH.
ソフトフィルター『ケンコー PRO1D プロソフトンA』使用

はじめまして。

皆様、はじめまして。数百kmを一思いに走り抜く長距離高速バスの世界へようこそ。

私は元バス会社従業員として、そのような高速バスを日夜送り出す仕事をしていました。それから何年も経ち、バス会社退職後は学生に逆戻りしたり、写真家として写真展を開催したりと、これだけ読めば高速バスとは無縁に見えますが、大学に通いながらも、写真家として活動しながらも、バス会社時代に乗客が無事目的地に着くようにという願いを持って仕事をしていた日々を忘れたことはありません。

自己紹介が遅れました。元バス会社従業員の写真家、Masa Kei(本名:加王 昌光)と申します。
都内のバス会社に約5年間勤務したのち、専門学校東京ビジュアルアーツ写真学科へ入学。同校卒業と同時に大阪芸術大学写真学科に編入学、2017年3月に卒業しました。
卒業後は写真家として、2017年・2019年の2度、高速バスを題材にした写真展を開催しています。当面はこのときの写真を紹介する記事が主になると思います。

バス会社を退職して写真専門学校に行き、そこから芸大に編入、という周囲から驚かれることの多い経歴を辿っていますが、なにも人生をリセットしようと思ったとか、バス会社を嫌いになって退職したというわけではありません。

これを書いている時は、2020年初頭から猛威を振るう新型コロナウイルス感染症の影響により、感染拡大防止のための外出自粛が強く求められているご時世で、高速バス業界も大混乱という状況です。しかし、状況が好転した暁には、皆様に高速バスの魅力を発信し、高速バス業界を盛り上げていけるような活動をしていきたいと考え、色々と練っておりますので、何卒よろしくお願い致します。